アメリカに本拠地を置く定額制動画配信サイト「Netflix(ネットフリックス)」巣ごもり需要などもあって日々お世話になっている方も多いと思います。
通称このネトフリは2020年時点で全世界での会員数が2億人も突破、売上も好調で既存の劇場公開映画以外にも自社制作の映画やドラマ、ドキュメントにもかなり力を入れており、最近ではテレビCMでバンバン流れていた日本制作の連続ドラマ「今際の国のアリス」が全世界190カ国で配信され高評価を得ています。
そんなネトフリで新しいジャンルの映画があるのをご存知でしょうか。
それが「インタラクティブムービー」。
この記事のもくじ
インタラクティブムービーとは?
そもそも「インタラクティブ(Interactive)」は相互作用などの意味で双方向にやり取りができることであり、コンピュータや通信の世界での用語として用いられてきました。
ゲームの世界でもおなじみジャンル
かつてはゲームの世界でも90年代にはインタラクティブムービーと称したゲームソフトが発売されており、実写の動画をふんだんに使ってプレイヤーの選択肢でストーリーを進めていくゲームが特に海外中心に出現しては消えていきました。
日本でもセガのメガCD用に発売されたアドベンチャーゲーム「ナイトトラップ」なんかは、実写映像の監視カメラをプレイヤーが切り替えながらトラップを仕掛け侵入者を成敗していく内容でしたが、当時はまだまだドット絵のキャラクターが主流の時代、画質はお世辞にも良いとは言えない動画でしたが、アナログテレビの時代に映画みたいな動画がゲーム機から再生されるのはまだまだ新鮮な時代でした。
懐かしいLDゲームも
もっと古いところでは80年代にゲームセンターに登場した「LDゲーム」というのもありました。
もう「LD」というジャンルさえ若い世代には理解できないと思いますが、レーザーディスクを用いたゲームマシンで、LDから再生される動画を見ながら途中画面表示される操作を瞬時に入力するというゲームで、今で言う「QTE」というゲームイベントの走りかと思われます。
ただしプレイヤーの操作によってストーリーが展開するわけではなく、いわゆる「覚えゲー」と言われる部類に入るので準インタラクティブムービーと表現した方が正解かもしれないです。
なお当時のLDゲームを体験したい方はiPhoneでも「タイムギャル」というゲームが復刻されて発売されているのでお試しあれ。
ゲームと相性の良いインタラクティブ
時は進んで2000年代に入り「PS3」など高性能ハードが登場するとリアルタイムにムービーを描画できるようになり、ゲームの主人公が着替えた服装や所有している武器がそのままムービーシーンに反映されるようになりました。
プレイヤーの選択肢によって環境や感情、進行状況が変化するゲームも普通に発売され、現在ではインタラクティブ要素がゲームに入り込むことはごく自然なこととなっています。
映像の世界ではハードルが高い
ゲームというパッケージの中では比較的容易(当然作るのは大変)というか柔軟に対応できるインタラクティブ要素ですが、映像の世界ではかなり大変です。
まず身近なテレビはどうでしょう。
まずこの機能を使うにはテレビが放送局と繋がる必要があり、そのためのネット回線がテレビと繋がっている必要があります。
そもそもテレビはアンテナ線で映像が届くものという一方通行意識が強いので、わざわざネット接続する人も多くはないはずです。
そういうのをしたい人はスマートテレビなんかを選んでいることでしょうし。
ただテレビは大多数が見ているものなので、自分の自由だけで次の選択肢を決めることは難しそうです。
先日「水曜日のダウンタウン」の生放送において、視聴者投票でお笑い芸人のクロちゃんに何をさせるかという番組を1時間に渡って放送されましたが、あくまで投票で多数派意見をまとめるだけで、思ったとおりにコントロールできるわけではありません。
ただ試みとしては面白かったです。
インタラクティブとはちょっと違いますが、ザッピングという視聴方法を用いてアメリカのケーブルテレビが多チャンネルを用いてドラマを放送したことがあり、視聴者は場面に応じてチャンネルを行き来しその場に応じた映像を選択しながら見ていくという面白い試みをしたこともあります。
映画の世界では?
恐らくインタラクティブが向いていない一番のジャンルが映画(映画館で観る映画)かも。
なぜなら皆さんお金を払って足を運んでいるわけで、わざわざ人の選択肢で映画を観たいわけではありません。
勝手にエンディングとか変えられたら嫌だし。
可能性としてはエンディングを複数用意しておいて、エンディングは別のシアターで観ること位でしょうか。
演劇の世界では?
ムービーとは離れてしまいますが、一番再現しやすいのが演劇かもしれません。
ただしこちらも大多数が観ているものなので投票制となりますが。
鳥居みゆきさんが主演を務められた法廷モノの「モンスター」という演劇は、最後は観客が有罪か無罪を選択し多数決によってエンディングが変化する面白い仕掛けがありました。
ただこれも多数決なので自由ではありませんよね。
最も適したフォーマット
前置きが長くなりましたが、ゲームに次いで最も適したフォーマットが「動画配信」ではないでしょうか。
理由としては簡単で、そもそも動画配信はネット接続前提であり当然双方向通信が可能です。
もちろん映像は事前に用意する必要があるので無限の自由は無いものの、選択肢によってストーリーに影響を与えていく事は可能です。
でそれを実現してしまったのが「Netflix」のインタラクティブムービーです。
ネトフリのインタラクティブムービー
視聴方法は簡単で、検索欄に「インタラクティブ」と打ち込めば対象の映画やドラマ、アニメ、ドキュメントが表示されます。
現在配信されているのは12作品で、今後2作品も予定されているようです。
インタラクティブムービーは各作品のサムネイル左上に星マークが付いています。
対象の端末は?
インタラクティブムービーを見られるのはスマートフォン、タブレット、PC、スマートTVに限られ、残念ながら通常のTVでは視聴することができません。
とは言いつつむしろネトフリをTVで見られる環境の方が少ないと思われるので、ほとんどの人が利用できるはずです。
どうやって進めるの?
実際にどんな風に進めるかやってみます。
まずは時間も15分程度と短い「You vs. Wild -究極のサバイバル術-」で試して見ましょう。
現在エピソードは8まであり、まずは時間の短いエピソード1「ジャングル救出大作戦:全編」を視聴してみます。
女医が薬を届けに言ったままジャングルで消息をたってしまったので探しに行くというストーリーです。
本来であれば見ているだけだし、女医も必ずジャングルで見つけれるというのがセオリーですが今見ているのはインタラクティブムービー、必ず見つかるとは限りませんよ。
女医を探しにジャングルへ
では映像スタートです!
セスナに乗っている主人公。
君の選択肢で進めていくよと説明されます。
いきなり最初から「かぎなわ」か「スリングショット」どっちの道具を持参するかの選択を迫られます。
いざという時にも崖を登れる「かぎなわ」か武器にもなる「スリングショット」か、悩む、、、。
当然時間制限はあるので早めに決断しましょう。
ちなみにここの選択肢、単に道具を選ばせているわけではなく後半では選択肢が運命の分かれ目となってくるので慎重に。
次は「ジャングルを進む」か「川に沿って進む」かを決めます。
当然この選択肢でこの先のストーリーが川になるかジャングルになるか変わってきます。
3つ目は人を探すために「サルの鳴き声」を参考にするか、「木に登る」で広く探すかを問われます。
このあたりになってくるとめちゃくちゃ決断に迷います。
とこんな風にストーリーを進めて行くのですが、残念ながら最初は途中で行き詰まり断念。
2回目も怪我をして進めず断念。
やっと3回目で女医と出会うことができました。
選択肢のやり直しも
実は選択肢の部分ではある程度戻ってやり直すことも可能。
自分でストーリーを創り上げるために戻らず進むも良し、グッドエンディングを目指すために何回もロールバックするのも自由です。
長編映画も面白い
慣れてきたら長編映画にもチャレンジしてみましょう。
オススメは「ブラックミラー:バンダースナッチ」。
普通にプレイすると90分〜120分程度かかるボリュームのある作品です。
選択肢でマルチエンディングに
この作品の面白さは選択肢によってエンディングが変わるところ。
悲しいエンディングからバッドエンディング、ちょっとしたコミカルなものなど幾つかのパターンが用意されています。
主人公とのリンクも
主人公は精神を病んでいるゲームプログラマーで、同じく選択肢で進んでいくゲームの開発をしていくこととなります。
そのうちに自分の身の回りで起こる不可解な現象に気づき、それが何者かによってコントロールされているのではと疑念を感じ始めます。
進め方によってはNetflixも要素に出てきたり、彼の事をコントロールして申し訳ないなと思わされる仕掛けなんかもありかなり作り込まれている作品です。
選択肢もかなり運命を変えてしまう大きな決断もあれば、音楽や食べ物を選ぶ選択肢、電話番号を推測して1〜9までの数字を組み合わせて選んでいくというゲームさながらのシーンもあったりで、ネットでは攻略サイトも多数見つかるくらいです。
この作品をやってみると新しい可能性を感じられるはずです。
映像の分岐など多くのシーンを用意する必要があるのでなかなか多数の作品を量産することは難しいようですが、今後は確実に増えていき人気も出ていくジャンルになるはずです。
自分がホラー映画の主人公になって生還を目指すとかあっても面白いだろうし、もしかしたらアダルトの分野でも活用されるかもしれないですね。