愛車が「おサイフカー」に変身−新スタートした『ETCX』で生活がもっと便利になるかも

高速道路を利用する上で欠かせなくなった電子料金収受システム「ETC」。2001年にスタートし現在の普及率は9割を超えているのにも関わらず、「高速にしか使えなくてもったいないなぁ」なんて思っていたら遂にその技術を応用した新サービス「ETCX」2021年4月29日から稼働しはじめました。

「ETCX」って「ETC」とどう違うの?

「ETCX」、、、車で使う「ETC」に『X』が付いているのですが何が違うんでしょうか?

ETCXは今まで高速道路でしか使えなかったETCを、街中や生活圏で使えるよう利用用途を広げた新しいサービスです。ETCと言えば車の窓を開けたり、通行券を取ったり、お金を支払ったりそんな手間から開放され、専用ゲートを低速走行するだけで支払い完了するのでとても便利でスムーズな走行を生み出す画期的な技術です。日本ではスマホをかざす電子決済がやっと根付いたところですが、実は20年も前からそれと同じような仕組みが使われていたわけです。で、この仕組みを例えばドライブスルーとか駐車場の支払いなどに活用したらもっとスムーズで便利、そして今の御時世でできるだけ接触タイミングを減らし安全な支払いを行う事も可能になります。

専用カードも機器買い替えも不要

新しいサービスが追加されるとそれ専用の機器に買い替えなければいけなく、それが新フォーマット普及の妨げになることは少なくありませんよね。このETCにおいても2015年ごろに「ETC 2.0」が登場し、指定ICで一旦乗り降りをして道の駅に立ち寄ることができたり、フェリーの支払いや所定区間での割引、カーナビと連携し交通情報などの提供が行われるなどより活用価値を広げることができるのですが、その普及率は従来のETCを超えることが無い様子。その背景としては機器の買い替えというハードルが必要で、タダでさえETC 2.0機器は従来品よりも1万円程度の価格差があり、車の装備品なので工賃も必要になります。提供されているサービスも恩恵を感じにくいので、数万円を投資してまで変更しようとする人も多くないのが現状でしょう。実際私が昨年新車購入時、ディーラーからの勧めは従来のETC車載器でしたし、ディーラースタッフも2.0に関してのメリットや知識を持ち合わせていませんでした。私は事前に調べていて活用価値を感じていたので自ら2.0を希望しましたがこういう部分がハードルになっている現状は確かです。

では今回のETCXについてはどうでしょう。まず機器に関してですが、従来の「ETC」機器そして「ETC 2.0」機器共に利用することが可能で専用機器への買い替えは不要です。次にETCカードですが、特定の提携ブランドのカードが必要なだけで、もしそのブランドカードを利用中であれば特に作り変えや新規発行は必要ありませんし、ETC機器が装着可能な2輪車でも利用は可能なので今までの機器とカードで利用が可能というわけです。

対応ブランドはまず5社から

対応するクレジットカード会社のブランドは順次増加していくとの事ですが、サービスイン時での対応ブランドは次の5社です。

  • 株式会社イオン銀行
  • 株式会社クレディセゾン
  • トヨタファイナンス株式会社
  • 三井住友トラストクラブ株式会社
  • ユーシーカード株式会社

いずれも大手なのでこのブランドのETCカード所有率は高くすぐにでもスタートできる人は多いでしょう。

登録はネットだけで完了

ETCXを利用するには登録をすることが必要です。利用登録はネットだけで簡単に完了し、後日の登録を待つこと無くすぐに利用開始することが可能で、登録や利用にあたり登録料や年会費も不要になっています。

実際どうやって使うの?

PayPayとかの電子決済の時もそうでしたが、初めて使うときってドキドキしますよね。もし操作が間違っていたらとか、決済できなくてレジが混雑したらとか色々考えてしまいます。ETCXの使い方は簡単で高速でのETCと同じく無線通信で決済が行われます。ただし高速のレーンと確実に違うことが1点。それが「必ず所定の位置で停止する必要があること」。高速道路利用時のように20Km以下での走行などで利用することはできず、必ず停止することが絶対となっているので注意しましょう。

現在利用可能なのは1店舗

まだまだ始まったばかりのサービスで施設側での工事と設備投資が必要になってきます。そのため現在の対象施設はまだ1店舗のみ。新名神高速道路内にある鈴鹿PA(上り)の「ピットストップSUZUKA」でまずはサービスが開始されています。

ファストフード店舗から爆発的普及の予感

まだまだ1店舗で普及には時間がかかりそうに思われがちですが、例えばコロナ禍におけるセルフ式レジシステムや電子決済などここ1年でまたたく間に普及しました。ETCXも非接触・非対面、しかも車内という密室空間を有効活用できるのでこの時代での普及は瞬く間という感じでしょう。例えばマクドナルドなどは土日ともなればドライブスルーが大混雑、スピード命の業種でモバイルオーダーやデリバリーもいち早く取り入れています。なので早いうちに全店導入とかするのではないでしょうか。そしてマクドナルドが導入して成功すると瞬く間に牛丼チェーン点などにも導入されるでしょう。

割引キャンペーンなども?

電子決済と言えば割引キャンペーンが魅力的です。PayPayが登場した時も億単位を投じた大胆な割引キャンペーンが行われそのせいもあって一気に普及率が高まりました。ETCXも割引適用させる仕組みは有り、普及してくると各店舗で割引キャンペーンが行われることは確実でしょう。

どんな活用例が出てくるかを予想してみる

スマホを用いた電子決済と異なり、車がそのまま「おサイフカー」になるので今までとは違った活用方法が期待できそうです。こんなサービスでてきたら良いなって希望を込めて予測してみました。

ドライブスルー

確実に登場し普及を加速させるのが飲食のドライブスルーでしょう。マクドナルドやスタバのドライブスルーは混雑しやすい店舗ですし、スタッフの安全確保や待ち時間の短縮なども視野に導入されていくのではないでしょうか。また新しいサービスということで、導入=使ってみたいために利用という顧客層もいるし、コロナ禍での安全対策を講じているイメージとしても良いので、企業側としても導入を急ぐ可能性があります。

コインパーキング

日本もキャッシュレスに慣れてきて、コンビニにおサイフを持参せずスマホだけを持っていき買い物する若者も増えつつあります。コインパーキングも1万円札とかしかなければわざわざどこかで両替しないといけなかったり実は不便な面もありますよね。もしETCで決済できたらお金が無くてもパーキングの利用ができるし、大雨でも支払いをしにいかなくて便利になります。

テーマパーク

テーマパークの駐車場は入場時に支払いするので渋滞が起こる事は茶飯事です。もしここにETCXが導入されたら高速のレーン並みにスピードが向上するので導入に期待が高まります。

プリファード区画

最近テーマパークなどでも「プリファード区画」と言われる優先された区画を別料金で販売している場合などがあります。ETCXの仕組みを使ってテーマパークやショッピングモールで若干高いプリファード区画を作る事も可能ではないでしょうか。

ガソリンスタンド

車と直接関係あるのがガソリンスタンドでこちらも大手が導入するはずでしょう。大手スタンドではクレジットカードと紐付いた非接触型のキーホルダーなどの作成を勧めており、それと同じくETCXで給油してもらえることは単価の向上も見込めるしスタンドとしては積極的に導入したいはずです。利用客からしてもセルフスタンドで給油が完了したらその時点で決済が終わっているのでスムーズな出発ができるなどメリットも多いですし、フルサービスのスタンドでも油種を伝える時のみのスタッフ対面なのでより安心した給油が可能になります。洗車機も支払い処理が無いので便利に使えそうです。

車で外出中、運転も支払いもドライバーの役割で、狭い運転席でゴソゴソするのって意外に大変だったりしますが、今後は注文したら財布もスマホも使わず車をとめるだけで決済完了というメチャクチャ便利な未来が目の前までやってきています。ぜひぜひ色んな店舗で普及してくれることを願っています。