【Netflix】アーミーオブザデッド配信-走る・殴る・知的なパワフルゾンビ映画誕生

2021年5月21日に話題のゾンビ映画「アーミー・オブ・ザ・デッド」Netflix(ネットフリックス)の独占映画として配信開始しました。とにかく時間と予算をかけたゾンビ映画で、2時間半グイグイ引き込まれる映画となっています。

ザック・スナイダー監督作品

この映画のメガホンを取ったのがザック・スナイダー監督。もともとMVやCMを制作するディレクターだった彼が映画監督としてデビューした作品が2004年公開のゾンビ映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」で、1978年に劇場公開され世界中で大ヒットした巨匠ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」(Dawn of the Dead)をリメイクしたもので、この映画からゾンビ映画というジャンルが確立されるもののその後は下火に。それがスナイダー監督のリメイク版で再びゾンビ人気が高まり、バタリアンの4/5作目が12年ぶりに復活したり、ロメロ監督が20年ぶりにゾンビ映画「ランド・オブ・ザ・デッド」を監督したり、FOXチャンネルのドラマ「ウォーキング・デッド」に人気が出たり、ゲームと映画共にバイオハザード・シリーズがその後も好調だったこともあり一定の人気を保つジャンルになりました。そういえば日本でも「カメラを止めるな!」(2018年)が大ヒットしましたよね。

ゾンビ映画を再燃させたスナイダー監督が17年ぶりに世に送り出したのがこの「アーミー・オブ・ザ・デッド」で、新たなゾンビの在り方を示しているので再びゾンビ映画の方向性を変えてしまうかもしれません。

created by Rinker
¥1,418 (2021/09/22 14:28:53時点 Amazon調べ-詳細)

ゾンビ

この映画に登場するのは俊足で走り、人をボコボコに痛めつけ、さらに知性まで身につけるという今までに無かったゾンビたち。かつてゾンビ映画は外れた関節をぶらぶらさせながらノロノロ近づいてくるのがスタンダードでした。実際ゾンビを生み出してきたロメロ監督もリメイク版ドーン・オブ・ザ・デッドでのゾンビに対して「ゾンビが走るのは解せない」とコメントしています。

走るゾンビ誕生

走るゾンビ映画というのは80年代初頭には登場してきたようで、最も一般的になったのは「バタリアン」(1985年)じゃないでしょうか。私が子どもの頃は金曜ロードショーなどで何度も放送されていたので日本でも知名度の高い映画かと思いますが、この映画の内容が実はロメロ監督のゾンビ映画1作目「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」が実話で軍人施設で起こった事件を元に映画化したなんてストーリーになっていますし、映画の冒頭ではご丁寧に「この映画は真実だけを描いている。したがって人物、団体名はすべて実名である」とか出てくるし、原題はロメロ映画の映画タイトル「Living Dead」をもじって「The Return of the Living Dead」という映画で、実はホラーとかスプラッターとかではなくて、なぜかパロディ映画のジャンルに入れられてたりします。まぁ確かに走るし、脳みそを破壊しても死なないし、会話できるゾンビも出てくるし、やっぱりパロディのジャンルになるのかも。

created by Rinker
ワーナーホームビデオ
¥945 (2021/09/22 14:28:54時点 Amazon調べ-詳細)

さらに走るゾンビ誕生

バタリアンで認知された走るゾンビから17年経った2002年に登場したのが「28日後…」。昏睡状態で病院で目を覚ますと荒廃したロンドンの街になっていたという終末感バツグンのゾンビ映画で、とにかくこの映画に登場するゾンビが、噛まれたら速攻ゾンビ化、殴っても倒れない、陸上選手並みに俊足というトラウマ感バリバリのゾンビたちで、元気で強いゾンビを定番化したのは間違いないでしょう。

created by Rinker
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
¥1,000 (2021/09/22 14:28:54時点 Amazon調べ-詳細)

アーミー・オブ・ザ・デッド

ゾンビの歴史を理解したところで今作の「アーミー・オブ・ザ・デッド」です。

ストーリーはこう「アメリカ軍がエリア51から未知の生物を輸送中、新婚ウキウキでいちゃついているクルマと正面衝突。実は輸送中のコンテナには超パワフルなゾンビが入っており、事故の衝撃で逃げ出したゾンビは兵士を襲撃。そして目下に迫るラスベガスへと向かい、街はゾンビに汚染され封鎖される。」

ここまでだと普通のゾンビ映画ですが、ここから先のストーリーはザック・スナイダーらしい展開で、「隔離されたラスベガス。政府はラスベガスを爆破しゾンビたちを一気に始末する計画を実行に移すが、実はラスベガスの地下金庫には莫大な資金が眠っており、謎の日本人(真田広之)の依頼で強盗計画を実行することに。あらゆる分野から集められたスペシャリストと共にチームを組んだ強盗集団は、ゾンビが溢れる隔離されたラスベガスへと自ら向かってくのだった。」という、ゾンビを退治するとかゾンビから逃げるとかじゃなく、ゾンビをガンガンやっつけながら金庫破りをする強盗映画だったりもします。

再現されたラスベガスの街

スナイダー監督は日常と非日常を組み合わせて現実味のあるフィクションを作り上げるのが好みで、そういった嗜好からショッピングモールに立てこもるゾンビ映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」のリメイクを行ったのかもしれません。今回はそれ以上に規模を広げたラスベガスが舞台。ただ、24時間眠らない街であるラスベガスで撮影をすることは不可能で、実際にはニューメキシコ州にセットを組み撮影が行われました。とはいうものの、全長8キロにも及ぶラスベガスの街をセットだけで再現する事は時間的にも予算的にも不可能。そこで、役者の身近にあるものは実際セットして作り込み、その他はCGで再現。大量の廃車やガレキはリアリティを追求するため本物を用い、大量のトラックを使い運び込まれました。

CGで作られる街

監督がセットで撮影を行っている傍ら技術スタッフたちは実際のラスベガスへ入り、LiDARスキャナ(レーザー光の反射で距離を測定する3Dスキャナ)を用いた建物のモデリングを行い、クレーンを用いてのスチール撮影やドローンに搭載したフェーズワンカメラ(1億万画素以上の撮影が可能な高性能カメラシステム)での撮影に、地上と空で取り込んだLiDERAスキャナによるデータに合成、崩壊したラスベガスの街を映画の中に再現しています。

街は破壊し尽くされているので戦争の後のようになっていますが所々で繁栄していた痕跡を残し、ラスベガスであったことがわかるよう工夫されているそうです。

ゾンビ

ゾンビ映画においての主役は主人公たちよりもやっぱり「ゾンビ」でしょう。今作ではドーン・オブ・ザ・デッドでも見られた俊足のゾンビの他、よろよろ歩くシャンブラーと言われるゾンビも登場。シャンブラーはゲームで言うところのザコ敵なので無視しても良い存在なものの、メイクなどは監督のこだわりで典型的ゾンビ映画のメイクを目指し1〜3時間をかけてメイクしており、効率化のため100人以上のエキストラにシア素材の生地にペイントしたものを着用させ、昔ながらのマスクも使い劇中に大量のゾンビを発生させています。メイク以外にも服装にもこだわっており、一着ずつエイジング加工した衣装は4万着も作られたそう。

ゾンビと言えばあの典型的な歩き方ですが、それぞれの役者さんが思うゾンビの歩き方に任せ特に統一は持たせなかったそうですよ。

段階的なゾンビの姿

ゾンビと言えども屍なので、当然時間と共に腐敗し朽ち果てていきます。劇中では時間軸も配慮されており、ゾンビの姿が4段階に表現されています。

ゾンビの段階

第1段階では噛まれた直後の段階で、顔は青ざめ血管が浮き出てきます。第2段階になると死斑が現れ皮膚が濁った茶色に変化し、血管が凝固してきた影響で干からび始めます。第3段階では皮膚はやせ細り骨格が目立つ体型へと変化し目が奥目のようなゾンビらしい特徴的な顔つきになり、肌の色も感想のため灰色になります。最後の第4段階では完全に血色は無くなりガサガサの肌へ。ここまで来ると乾燥して干からびてしまうようで、劇中では朽ちたゾンビに対して雨が降ったら水分を吸って復活するという話も出ていました。

ゾンビの大群

今作の見どころのひとつがゾンビの大群。ラスベガスに所狭しと集まるゾンビの姿が登場します。その数1万体。実際には150名ほどのエキストラをデジタルスキャンしCGで増殖させたそうで、何度か登場するゾンビの大群はやはり終末感を感じさせられます。

パワフルゾンビ「アルファ」

かつての朽ちていくゾンビではなく、ウィルスによってパワフルになってしまったゾンビ「アルファ」も登場します。アルファはパワフルなだけではなく、考えて行動できるゾンビで、怒りや悲しみ、復習、仲間意識、男女の区別なんかもできる映画史上おそらく最強のゾンビ。とにかく強くて人間を簡単に片手で持ち上げてはふっとばすというゲームのボスキャラ並みの存在で、劇中には王と王妃が登場しアルファはゾンビたちを統率しているというリーダーシップぶりも発揮している恐ろしい存在です。ただこれはゾンビ界における生存競争であり、ゾンビ映画では共存し崩壊していく姿が描かれることも多いです。

演出

「ドーン・オブ・ザ・デッド」に始まり、「300」「ウォッチメン」「エンジェル・ウォーズ」など、独特の映像演出で毎回驚かせてくれる監督ですが、撮影監督も兼ねており実際に監督もカメラを持って撮影を行いました。「300」などではセピア調の独特な色合いの世界観を作ったりしていましたが、今作ではカメラの絞りを完全固定で撮影したそう。また被写界深度の浅いカメラを使い暗い場面でのゾンビたちを際立たせる撮影を行ったり、キャノンの日本製レンズをカスタムし、あえて「欠陥」を生かした撮影で独特のボケ具合や柔らかい映像が作中に反映されています。

特殊メイクとデジタルの融合、そしてザック・スナイダーらしい演出。特に音楽の使い方などでも彼の作品を見てきた人ならニヤリとするシーンが散りばめられています。ドーン・オブ・ザ・デッドに比べると思ったほど残酷シーンも少なく、親子関係などのドラマ性も垣間見られ、これが劇場公開されないのがもったいないくらいの作品です。

今後は前日譚を描いた「Army of Thieves」とアニメ作品「Army of the Dead: Lost Vegas」も2021年に配信されるとアナウンスされていて、新たなるゾンビブームがやってくるかもしれませんよ。